誰でもわかる「いいこと」
◆ 誰でもわかる「いいこと」をした。東横線の駅のホームで白(はく)杖(じょう)を手にした若い女性に出会った。慣れた様子で歩いていたけれど「ガイドしましょうか?」と声をかけた。長年にわたり日本点字図書館での朗読奉仕や視覚障害者食生活改善協会での対面朗読など、盲人のために本を読むボランティアを続けてきたので、慣れているところでもガイドがあれば緊張しないですむから助かるという盲人の声をたくさん聞いていた。
「はい、お願いします」と答えた彼女に腕を貸し、並んで10歩ほど歩いたところで「どちらまでいらっしゃるの?」と尋ねた。ホームには各停渋谷行きが止まっていて急行渋谷行きを待っていたから、どの電車に案内すればいいかを確認する必要があったのだ。
「横浜線に乗ります」。エッと私。私が声をかけなければ、彼女は渋谷方向と反対側(後方)にある横浜線の乗換え口につながるエスカレーターを背にして、どこまでも渋谷方面(前方)に向かって歩き続けてしまうところだった。多分彼女は横浜方面から各停で到着し、ホームに降り立って左に歩かなければならないところを右に歩いたのだとその時になって私は気がついた。
実は少し急いでいたのだけれど、横浜線の乗換え口まで彼女に腕を貸した。「ありがとうございました!」「気をつけてね」と言葉を交わしたあとも私はしばらく横浜線のホームに向かって歩く彼女を見守った。
P2の開発協力は、いつかいい結果が出ることを目指して20年もの間がんばっているのだけれど、いつかはいったいいつの日か。そんななかでのこの日の出来事。「ありがとうございました!」彼女の明るい声はだれにでもわかる「いいこと」をしたことの証明に思えた。たまにはこんな瞬間(とき)を嬉しく思ってもバチは当たらない?