フィリピンの南沙織
1970年代のアイドル・南沙織は、山口百恵や桜田淳子に先行するアイドル第一世代です。当時は小柳ルミ子、天地真理とセットでアイドル三人娘とされていたのですが、いやいや、全然違うぞ。かわいくて、爽やかで、知的な雰囲気がとても上品。
youtubeで見始めたら、とまらなくなってしまいました。17歳の時もかわいいけれど、まっすぐに成長した引退間際の雰囲気、そして1992年にほんの少しだけテレビ出演した時のすてきな大人の女性らしさ。そして、なによりも暖かくて伸びやかな歌声。こんなに歌、うまかったんだ。
沖縄出身の彼女は、デビュー当時は奄美出身ということになっていたそうです。しかもフィリピンとのハーフということになっていました。実際にはお母さんの再婚相手がフィリピン人だったそうですが、どうしてそういう風な出自に変えられていたのか、今考えるとかなり興味深い。
僕は実感として経験したことはないけれど、金城宗和によれば、沖縄出身者差別というのは一部ではかなり強くあったそうです。しかも当時はまだ、沖縄返還前。その沖縄出身というのは、今では分からないけれど、アイドルとしてはマイナス要素になったのでしょう。
一方、今では時に出稼ぎ者のイメージで語られてしまうフィリピンは、当時はエキゾチックなアメリカ文化の響きがあったのだろうと想像されます。それやこれやで奄美出身フィリピンハーフ、になっていたのではないかな。
作家の大岡昇平が彼女をとても気に入っていて、1974年の『婦人公論』2月号で南沙織と対談しています。
http://www.cynthiastreet.com/book/fujin.html
その対談は残念ながらあまりかみ合っているとは思えないのだけれど、大岡昇平は「あなたのお父さんはフィリッピンの方でしょう。ぼくはフィリッピンへ、戦争で行って、その話ばかり書いてる。だからフィリッピンはぼくの守備範囲なんだよ」と言いながら、「かわいくってさ、スタイルもいいしね、顔もいいけど(笑)」などと大絶賛しています。
64歳の大岡昇平が19歳の南沙織に懸命にしゃべっている姿は、どちらかといえば痛々しい感じもあるのだけれど、フィリピン、沖縄というキーワードに反応してしまう僕としては、対談できていいなぁ、と大作家大岡昇平を羨んでしまいます。もっとも当時、僕が17歳だったわけだけれど。
最近では銀杏BOYZもカバーしているデビュー曲「17歳」が出たとき、僕は15歳。南沙織と同じようなストレートヘアのガールフレンドと生まれて初めてつきあっていた僕は、その彼女にもちょっと重ねて、「海辺のまぶしさ 息もできないくらい」というフレーズに、まさに息もできないくらいになっていました。
自分の部屋に初めて張ったポスターは、当時とっていた「中学1年コース」についていた折り込み付録でした。日焼けした素肌がまぶしかった・・・。
森高千里が「17歳」をカバーしたときに、南沙織バージョンがゆっくりとして古色蒼然とした感じにさえ感じられて寂しく思ったものでしたが、今になってみると、森高千里の方が時代性が強くて古くさい。南沙織はかなり普遍的な価値を持った楽曲になっていると感じます。
また出てきて歌ってくれないかなぁ。今井美樹のような、いろいろな世代に支持される歌手になると思うのだけれど・・・。
