ブータンの近代化は
国民総幸福(GNH)が数年前話題になったブータンは、非常に興味深い国だ。
まず、入国がとてもむずかしい。現在はある程度受け入れるようになったものの、ぶらっと観光で歩き回れる国ではない。
99年まで、テレビ放送もなかった。今でも国の多くの人々は民族衣装を着て、ゆったりとしたペースで暮らしている。
2006年、国王が自ら退位を宣言、皇太子に国王位を譲った。しかも国王自らが民主制度を進める改革を打ち出している。
この国がこれからどうなっていくのか。『ブータンに魅せられて』(今枝由郎/岩波新書)を読むと、人々はゆっくりと改革を受け入れながらも自分たちの価値観を大切にしていくように見える。
「今でも国民の大半が、男も女も各々「ゴ」および「キラ」という民族衣装がもっとも着やすく落ち着ける衣装だと感じており、それに愛着と誇りを持っている」(p.125)のだという。
『ブータンにみる開発の概念』(上田晶子・明石書店)は、若者に焦点を当てているので、もう少し大きな変化が見て取れる。「実際問題、民族衣装をいつもいつも着るのは不便なこともあるというのは若者たちに共通の反応である」(p.261)と上田は書いている。
ブータン初のDJジグメは、2002年、ブータン初のライブハウスを開いた。若者たちにクールな西洋文化をどんどん紹介したい、と彼は言っていた(NHK・BSドキュメンタリー「ブータン・青春ラプソディ」2007年1月放送)。また、別のドキュメンタリーでも、一部では急速に変わりつつある、しかし一方ではまだ伝統が根付いている現代のブータンが紹介されていた。
しばしば開発のアンチテーゼとして、あるいは「脱開発」のユートピアとして僕らが夢想する、ブータンのスタイル。でも、僕自身、そうした生活に満足できるかどうかはかなり微妙だし、現代日本の若者のほとんどには無理なことだろう。
そうした伝統文化崩壊過程が劇的に描かれていたのは本とビデオで紹介されている『ラダック・懐かしい未来』(ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ/山と渓谷社)だった。
さて、10年後のブータン、どうなっているだろう。祈りたい気持ちが半分、諦めに近い気持ちが半分。
一度は見てみたい国だ。(でも、寒そう・・・)