フィリピンは今真夏だ。
真夏はマンゴーがおいしい季節で、毎日食べている。
マンゴーを切らさないように電車に乗って、
2駅行ったところにある市場へ買いにいった。
何も電車に乗らなくてもその辺の道端でも買えるのだが、
その市場に行く私の目的は’猫’である。
その市場の一角にはペットショップもたくさん軒を連ねていて、
そのうちの一軒の猫と先週仲良くなったばかりなのである。
行きはその店に人が多かったのと、猫がいるように見えず通りすぎ、
とりあえず野菜や果物のコーナーへ行った。
まずはベンゲット(ルソン島北部にある州)野菜とオーガニックライス。
それからマンゴーへ。
先週はスーパーよりは安いけど市場でその値段は高いのでは、
という値段で割ときれいなマンゴーを買った。
しかし今回、シワシワだったり凹んでたりと’難あり’を安く売っているところを発見。
シワシワな中でもおいしそうなのを選んでいると、
広がった傘の下からシワシワのおばあさんが出てきて、
「ヒロットする?」と話しかけてきた。
傘の向こうに人がいたので、あぁ、マッサージをしているのだろうと思って、
「えぇ、いくらなんですか?」と聞くと、
別のところから若い女性がでてきてマンゴーをプラスチック(ビニール袋)に入れた。
おばあさんはまた傘の向こうに戻り何やら叩いたりもんだりしているよう。
まぁまた来るだろうし、今日は帰ろうと、買ったものをまとめていると、
おばあさんがまた出てきて、「家はどこなの?家でヒロットするよ。」と言う。
何で家の場所まで聞くのだろうと思ったのだが、これは家で出産するのに、
このおばあさんが取り上げてくれると言っているのだと気がついた。
「家はまぁ近いですけど…」と答えると、
「何ヶ月?」とお腹をさわろうとする。
完全に妊娠していると思われている。
「私妊娠してないし結婚もまだしてないですよ」と言ったつもりが、
聞き間違われたか私のタガログ語がまずかったのか、このおばあさん、
「え?結婚してないけど妊娠してる?!」と話に収集がつかなくなったので、
なんとな~くその場を逃れてきた。
最近ちょっと痩せたのに。ただワンピースみたいな服着てるだけなのに。
この服きてる時に'Yes, Sir!'と店で言われたこともあるし、この服ちょっと問題。
帰りにもう一回猫の店を通ると、仲良しになった猫が覚えていてくれて、
檻のすき間からなでなでして、また来るねと約束して帰った。
さっき猫がいるって気がつかなかったのは、私と仲良しの猫以外は、
普通の猫より一回り大きくて犬のように見えたからだった。
毛が長くて暑そうだ。
思えばあのおばあさんからヒロットについて色々知るチャンス。
ヒロットは結構年老いているって本に書いてあったとおりのおばあさん。
また市場のあの店に行けばいるだろう。
でもあのおばあさんに家で取り上げてもらう程、
安産だって言える自信は今はないなぁ、と考えながら帰った。
※ヒロットは’マッサージ師’の意味だが、
体をマッサージすることは伝統産婆の基本的な行為であるため、
タガログ語圏では伝統産婆のことを指す。
('The Hilot in Oriental Mindoro'より)